NOVEL

天球儀 其の零

天球儀 其の零 ep.6 八月「乙女座の恋煩い」

私は 子供の頃 お母さんに捨てられた。  いわゆる 資産家の男性の愛人の子、ということだ。  お父さんは 認知してくれたけど 本妻の人が 当然といえば当然だが 一緒に暮らすのを嫌がって マンションを一室あてがわれた。  味方は 実のお母さん...
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天球儀 其の零 ep.7 九月「天秤座の混乱」

どうしてだろう。  どうして俺は好きになってもらえないのだろう。  当たり前のように好きだった。  愛していた。それが当然で必然なのだから。  俺の傍には沙羅がいて  でも沙羅は俺を見ようとしなかった。  どうしてだろう。        「...
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天球儀 其の零 ep.8 十月「蠍座の真実」

図書館の学習スペースで葵と譲は向い合って山のような追課題を片付けていた。 「あーうーあー」 「葵ーうるさいよー」 「だってさ!、先月ずっと警察と病院行ったり来たりだったんだぜ!」 「付き添った俺の身にもなってよー。葵がすぐに病院行かなかった...
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天球儀 其の零 ep.9 十一月「蛇遣座の迷走」

警察署から高坂が出てくるのを館林と玲奈は待っていた。 「男らしくない」 「すみません」  館林はしょぼんと肩を落としている。高坂が自分が名乗り出ると言って聞かずに押し切られた形になった。玲奈はその付き添いの形になった。 「あの…亘会長ですよ...
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天球儀 其の零 ep.10 十二月「射手座の不具合」

ゆっくりと体をゆらゆらさせて玲奈に向かってくる。両手には何も持っていない。だのに狂気を感じる。  玲奈は動けなかった。  その細い指がゆっくりと首に向かう。    ガンッ!  大きな音で我に返った。  館林が鞄で思い切り譲を殴りつけたのだ。...
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天球儀 其の零 ep.11 一月「山羊座の母親」

世の中に自分が好きな人はどれくらいいるのだろうか? 私はいつもそんなことを考えている。 そして、結局考えても分からないが必ずいるだろうという結論に達する。   要するに私は私が大好きだ。     「久都さん」  久都凛子は学校の廊下で女生徒...
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天球儀 其の零 ep.12 二月「水瓶座の女王」

「母…親…?」 「通信は…ていうか、そもそも高校入学に年齢上限はありませんからね」 「まぁ、そうだけど…じゃあ、あのアプリとかも芽衣子が作ったっていうの?その前にスマホで話してたのも?」 「厳密には芽衣子…常磐芽々の関わっているプロジェクト...
天球儀 其の零

天球儀 其の零 ep.13 三月「魚座の手紙」

試験だけあって、十二宮室にかなりの人数が揃っていた。試験は十二宮なら特に勉強しなくてもクリアできるレベルになっていた。  3科目が終わり、十二宮室には今まで学校を休んでいた葵と斉太郎もいた。しかし、小紫沙羅だけはいなかった。朝、一度斉太郎を...
0831

0831 8月1日(日)

何から話せばいいのだろうか。今となっては分からない。  単なる物書きの性だ。忘れないように書き残しておこうと思う。  これは俺が愛した妻と、恋人と、見知らぬ少女のたった31日の話。  妻がかなり早く起きていた。出勤用のパンツスーツを着て朝食...
0831

0831 8月2日(月)

「そういえば、通り魔もう大丈夫なのかな」 「通り魔?だいぶ前に捕まっただろ?」  去年の初夏、近所で通り魔事件があった。死者も出ず、2ヶ月程で犯人は捕まったが1年前はこの街はその話題でもちきりだった。 「あれ?そうだっけ?」  妻はスーツ姿...