あとりえ透明3 あとりえ透明3「POP」 「おめでとうございます、朋さん」 雲ひとつない青空。 教会から出てくると一斉にフラワーシャワーが浴びせられた。 高校の時の同級生からあとりえ透明のお客様まで、知った顔が一同に並ぶ。「おめでとうございます」「おめでとうございます。松島さ…あ、... 2020.01.08 あとりえ透明3NOVELあとりえ透明
あとりえ透明3 あとりえ透明3「天秤量り」 「はあ?コンビニ辞めた!?無職か!?また無職か!?」 俺はカウンター越しに大きな声を上げた。「無職じゃない!ショップ店長!」「勤続年数が大事なんだよ!お前自分がいくつだと思ってるんだよ!あと3年で高齢者婚活行きだぞ!」「コンビニバイトよりは... 2020.01.08 あとりえ透明3NOVELあとりえ透明
あとりえ透明3 あとりえ透明3「キャンバス」 私があとりえ透明でアルバイトを始めて1ヶ月が経った。1ヶ月間は研修ということで、とにかく色を検索して絵の具を量るだけのカンタンなオシゴトだ。 お客さんは殆ど来なかった。笑さんや朋さんの知り合いらしき人が数人訪ねてきてコーヒーを飲んで談笑す... 2020.01.08 あとりえ透明3NOVELあとりえ透明
あとりえ透明3 あとりえ透明3「ノイズキャンセリングイヤホン」 私はそんなよくできた子どもじゃない。 定職にもつけず、ふらふらニートのような名目上のフリーターをやっている。 これと言って突出した特技もない。 お父さんに迷惑かけないように大きくなって、お母さんの役に立てることを必死で探した。 できること... 2020.01.08 あとりえ透明3あとりえ透明NOVEL
あとりえ透明3 あとりえ透明3「アクリル」 「いや、だから三角関数はこうガーとしてグーと曲がった所をパーンと割るだけなんですよ」「ごめん、全然分かんない」「なんで?せつなさん割り算できるでしょ?割り算できれば後はサイン・コサイン・タンジェント覚えるだけじゃないですか」「馬鹿にしてるで... 2020.01.08 あとりえ透明3NOVELあとりえ透明
あとりえ透明3 あとりえ透明3「絵美」 まさか自分が死ぬとは思っていなかった。いや、もちろんいつかは死ぬのだが、50代そこそこで彼岸の淵に立たされるとは思っていなかった。 少し思い出そう。 自分のこと。 妻のこと。 娘のこと。 笑のこと……絵美のことも少しは思い出そう。 ... 2020.01.08 あとりえ透明3NOVELあとりえ透明
あとりえ透明3 あとりえ透明3「才能」 「和泉さん!それ本当!?」 真っ先に立ち上がったのはせつなちゃんだった。「う……うん、お母さんも専門じゃないから、そういう話をちらっと聞いただけなんだけど、でも私居ても立ってもいられなくて……」 私はそのキラキラした眼差しに若干気後れしなが... 2020.01.08 あとりえ透明3NOVELあとりえ透明
あとりえ透明3 あとりえ透明3「笑」 最初の語り部が私だったから、最後の語り部も私にならないとダメだろう。 私が一番あとりえ透明を外から見ていたのだ。 5年前から婚約者という名目をいいことに三上翔のライターの助手をすることになり、取材でここ数ヶ月海外を点々としていた。そろそろ... 2020.01.08 あとりえ透明3NOVELあとりえ透明
あとりえ透明3 あとりえ透明3「最後に」 あの人は持っていた。 富も 名声も 美貌も 才能も 学歴も 恋も 愛も 結婚も 子供でさえも 私の持てなかったものをすべて持っていた。 「長生きだけ。私が笑さんよりできたのは」 すっかり遠くなった耳に不意に外から若い女の子の声が聞こえ... 2020.01.08 あとりえ透明3NOVELあとりえ透明