あとりえ透明3

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あとりえ透明3「POP」

「おめでとうございます、朋さん」  雲ひとつない青空。  教会から出てくると一斉にフラワーシャワーが浴びせられた。  高校の時の同級生からあとりえ透明のお客様まで、知った顔が一同に並ぶ。 「おめでとうございます」 「おめでとうござい...
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あとりえ透明3「天秤量り」

「はあ?コンビニ辞めた!?無職か!?また無職か!?」  俺はカウンター越しに大きな声を上げた。 「無職じゃない!ショップ店長!」 「勤続年数が大事なんだよ!お前自分がいくつだと思ってるんだよ!あと3年で高齢者婚活行きだぞ!」 「コン...
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あとりえ透明3「キャンバス」

 私があとりえ透明でアルバイトを始めて1ヶ月が経った。1ヶ月間は研修ということで、とにかく色を検索して絵の具を量るだけのカンタンなオシゴトだ。  お客さんは殆ど来なかった。笑さんや朋さんの知り合いらしき人が数人訪ねてきてコーヒーを...
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あとりえ透明3「ノイズキャンセリングイヤホン」

 私はそんなよくできた子どもじゃない。  定職にもつけず、ふらふらニートのような名目上のフリーターをやっている。  これと言って突出した特技もない。  お父さんに迷惑かけないように大きくなって、お母さんの役に立てることを必死で探し...
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あとりえ透明3「アクリル」

「いや、だから三角関数はこうガーとしてグーと曲がった所をパーンと割るだけなんですよ」 「ごめん、全然分かんない」 「なんで?せつなさん割り算できるでしょ?割り算できれば後はサイン・コサイン・タンジェント覚えるだけじゃないですか」 ...
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あとりえ透明3「絵美」

  まさか自分が死ぬとは思っていなかった。いや、もちろんいつかは死ぬのだが、50代そこそこで彼岸の淵に立たされるとは思っていなかった。    少し思い出そう。  自分のこと。  妻のこと。  娘のこと。  笑のこと……絵美のこと...
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あとりえ透明3「才能」

「和泉さん!それ本当!?」  真っ先に立ち上がったのはせつなちゃんだった。 「う……うん、お母さんも専門じゃないから、そういう話をちらっと聞いただけなんだけど、でも私居ても立ってもいられなくて……」  私はそのキラキラした眼差し...
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あとりえ透明3「笑」

 最初の語り部が私だったから、最後の語り部も私にならないとダメだろう。  私が一番あとりえ透明を外から見ていたのだ。  5年前から婚約者という名目をいいことに三上翔のライターの助手をすることになり、取材でここ数ヶ月海外を点々として...
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あとりえ透明3「最後に」

 あの人は持っていた。  富も  名声も  美貌も  才能も  学歴も  恋も  愛も  結婚も  子供でさえも  私の持てなかったものをすべて持っていた。       「長生きだけ。私が笑さんよりできたのは」  すっかり遠くなっ...
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