あとりえ透明2 あとりえ透明2「アッサム」 恋をした 高校の入学式の翌日 講堂前の広場で桜舞う中佇むその姿 桜色に映える緑のカーディガン 清楚な黒色の長い髪 長めのスカートの制服 そんな彼女は 振り返って自分を見止めると微笑んで言った 「あなた、メイドカフェに興味ない?」 ... 2020.01.08 あとりえ透明2NOVELあとりえ透明
あとりえ透明2 あとりえ透明2「ダージリン」 「高見原さぁ、いつまでこんな生活してんだ?」「こ・ん・な・せ・い・か・つ……?」 寒い季節だった。 10年ぶりに会った先輩に言われ、自分でもこめかみに青筋が浮かぶのが分かる。「だってさぁ、まぁ大学から院生までは分かるぜ。そのあと研究生で非常... 2020.01.08 あとりえ透明2NOVELあとりえ透明
あとりえ透明2 あとりえ透明2「ハニートースト」 ゴールデンウィークのある朝だった。「お客様、来られますっ。お一人様、多分初めての方で女性ですっ」 携帯型のインカムで声が届く。皿を磨いていた私と一花さんはため息をついた。「相変わらず便利ですね。せつなさんの人間カウベル。二階にいても外から... 2020.01.08 あとりえ透明2NOVELあとりえ透明
あとりえ透明2 あとりえ透明2「パッケージ・ティー」 「こんなのメイドカフェじゃねぇ!」 我慢ならず俺は机を叩いて、立ち上がった。店中の客の視線が集まるが気にしない。 向かいに座る友人の充から紹介してもらって、ついて来たのだが、想像していたのと何もかもが違った。 ミニスカートのフリルいっぱいの... 2020.01.08 あとりえ透明2あとりえ透明NOVEL
あとりえ透明2 あとりえ透明2「ハーブゼリー」 別に娘を監視しようというわけじゃない。 そんな父親にだけはなるまいと心に決めていたのだ。 だが、心配ではないか。娘がメイド喫茶でバイトをするなんて。 メイドを見たいなどという下心があるだろうか、いやない。 と、反語を使って否定するくらいに... 2020.01.08 あとりえ透明2NOVELあとりえ透明
あとりえ透明2 あとりえ透明2「大吟醸」 「はーい、では皆さん。今月の売上報告を致します」 閉店後の店内で私含め4人の女性が集まっていた。月末の一度の定例会議。全員固唾を呑んでいる。 端末を手に私はニッコリと笑った。「売上前月比23%増。暑い季節に頑張ってくれたわね。今年は残暑が厳... 2020.01.08 あとりえ透明2NOVELあとりえ透明
あとりえ透明2 あとりえ透明2「缶コーヒー」 知らなかったわけじゃない。 でも、知りたかったわけじゃない。 私は世間から身を隠すように生きてきた。母親も知らない。親戚にもほとんど会わせてもらえない。なんとなく、私は生まれてきちゃいけない子だったんだな、って子供心に分かっていた。 あの... 2020.01.08 あとりえ透明2NOVELあとりえ透明
あとりえ透明2 あとりえ透明2「ブラックコーヒーとカフェオレ」 「中条せつな……侑那せつな」 朝、朝食を用意しながらポツリと呟いた娘の言葉に俺は歯ブラシを床に落とした。「もしくは、進藤せつな。うん、こっちの方が語呂がいいな」 落ち着け。 そうだ、これは夢だ。 悪い夢だ。 もう一度眠れば目が覚める。「って... 2020.01.08 あとりえ透明2NOVELあとりえ透明
あとりえ透明2 あとりえ透明2「クリームソーダ」 「それで結局一緒に暮らしてるの?」「うん、とりあえず引っ越しじゃなくて居候的な感じで。でもずっと喧嘩してる」「やっぱり気が合わないんだ?」「じゃなくて、お母さんが料理したり掃除したりしたがって、怪我しかけてお父さんが怒る感じ」「何それー?て... 2020.01.08 あとりえ透明2NOVELあとりえ透明
あとりえ透明2 あとりえ透明2「インスタントコーヒー」 「ごめん、好きな人がいるんだ」 その言葉に私は肩を落とした。 城崎先輩はこの春入学したばかり。地味だけど知っている人は知っているサッカー部の名キーパーだ。 フラれるのは覚悟の上だった。 でも、やっぱり実際の事になるとひどく辛い。勇気を出して... 2020.01.08 あとりえ透明2NOVELあとりえ透明