0831 0831 8月1日(日) 何から話せばいいのだろうか。今となっては分からない。 単なる物書きの性だ。忘れないように書き残しておこうと思う。 これは俺が愛した妻と、恋人と、見知らぬ少女のたった31日の話。 妻がかなり早く起きていた。出勤用のパンツスーツを着て朝食... 2020.01.08 0831NOVEL
0831 0831 8月2日(月) 「そういえば、通り魔もう大丈夫なのかな」 「通り魔?だいぶ前に捕まっただろ?」 去年の初夏、近所で通り魔事件があった。死者も出ず、2ヶ月程で犯人は捕まったが1年前はこの街はその話題でもちきりだった。 「あれ?そうだっけ?」 妻はスーツ姿... 2020.01.08 0831NOVEL
0831 0831 8月3日(火) 朝から蝉の声が騒がしい。 昨日は結局妻の仕事は休ませた。今日もそうなるかもしれない。 「おはよー8月も終わるのに暑いわねー」 朝食を用意していると、妻が起きて来た。 「今日は何年の何日だ?」 「は?どうしたの?」 「いいから」 「201... 2020.01.08 0831NOVEL
0831 0831 8月4日(水) 妻の職場にしばらく仕事を休む旨を伝え、俺はある場所に向かった。 帰ってくるなり、妻が飛びついてくる。 「もーどうしたの?今日は大事な日なのに」 「だからだよ」 俺は役所でもらって来た婚姻届を出した。 「え?書いたじゃない。今日出すんでし... 2020.01.08 0831NOVEL
0831 0831 8月5日(木) 「あれ?かず君の家に泊まったんだっけ?」 「そうだよ。酔っぱらって寝ちゃったんだ。覚えてない?」 「え〜覚えてない〜今日は土曜だしいっか」 見た目は31歳の妻は、蜜月中の若い独身女性になって甘えてくる。それを可愛いと思ってしまうあたり、い... 2020.01.08 0831NOVEL
0831 0831 8月6日(金) 『彼女』の携帯を一世代古い物にした。アドレス帳は誰を入れていいのか分からなかったので彼女の実家と俺の携帯だけにする。 そして彼女を実家に帰すことにした。 メールで義父母に彼女の様子をありのまま伝えた。嘘みたいな話を義父母はあっさりと受け... 2020.01.08 0831NOVEL
0831 0831 8月7日(土) フリーライターという職業柄ツテの多さには自信があった。大学で心理学の講師をしている友人を家に呼びつけ、妻の様子を話す。 友人は難しそうな顔をして考え込み、慎重に口を開いた。 「心当たりは?前日とかに何かあったか?」 「いや、全く。普通に仕... 2020.01.08 0831NOVEL
0831 0831 8月8日(日) 妻のスマホの発信履歴は7月31日の朝9時で止まっている。そこに記されていた文字は『かず君』だった。 しかし、俺はその時間に電話をかけられていない。履歴を遡ったが他の俺とのやりとりは残っている。その一つの発信だけが俺の携帯にかけられていない... 2020.01.08 0831NOVEL
0831 0831 8月9日(月) 携帯電話の着信音で目が覚めた。寝ぼけた目で画面を見ると朝の6時だ。 妻からだった。 「もしもし」 「あ、あの……東さん……ですか?」 「……えっと神原さん。どうしたの?」 妻は今、23歳。俺と仕事で出会ったばかりの頃。久々に妻を旧姓で呼... 2020.01.08 0831NOVEL
0831 0831 8月10日(火) 言われても、義父にあの扱いをされては妻に会いに行くことも出来ない。 ふと、思い立ち義母にも電話をしてみようとしたが、親戚でフォルダ分けをしていたために誤って妻のスマホにかけてしまった。と言っても家にあるのだ。案の定、引き出しから軽快な着信... 2020.01.08 0831NOVEL