カタカナの話

今日は長文になります。

昨日、途中挫折したアニメの話をしたので、途中挫折した本の話をしようと思う。

私の母は元国語専攻の小学教諭で、特に読書教育には熱心だった。
漫画でも何でも本は読めばいいという主義だったが、自由に読む本の他に母から「次はこれ読もうか」と渡される課題図書みたいなものがあった。

童話を一揃い読んだ後は、子供用に訳された「吾輩は猫である」や「徒然草」「源氏物語」もあったと思う。
私は国語はすごく得意な子供だった。
その辺の課題図書を娯楽漫画と同じノリで読み進め理解していった。
ところが、初めてつまづく本に出会ってしまう。
「十五少年漂流記」だ。

今思えば、私は一種の識字障害か学習障害を持っているのだと思う。
固有名詞が漢字だと多少難しくても頭に入るのだが、カタカナは4文字以上だとキャパをオーバーしてしまう。
つまり海外文学は「マイケル」が出てきた時点でNGなのだ。
「ジョン」はギリOKである。

当然だが十五少年漂流記にはカタカナの人物が十五人以上出てくる。
そこそこ優等生だった私はそこで初めて「お母さん、この本わかんない…」と半泣きで本を返した。
母はわけが分からなかったと思う。
子供向けに書き直されているとはいえ、源氏物語を理解できた子が十五少年漂流記を分からないと言うのだ。
何か怖い描写でもあったか、嫌な登場人物でも出てきたか、いろいろ聞かれたが原因はわからずそれっきり母の課題図書はお終いになった。

自分がカタカナに対してなにか人より決定的に劣っていると自覚したのは小学高学年くらいのころだ。
世界地理で「朝鮮民主主義人民共和国」を書き取らせる意地悪問題みたいな設問がテストにほぼ必ず出た。
しかし私は北朝鮮の正式名称は一見で覚えられた。
覚えられなかったのは「アルゼンチン」だった。
「エベレスト」もヤバかったが、とにかく「アルゼンチン」を「アンゼルチン」とか「アルンゼンチ」とか下手したら「アンデルセン」とか何度も書き間違えて、教師に不思議な顔をされた。

中学で経験値をそこそこ積むと、100回くらい聞いたら覚えられるということに気づく。
高校受験の時は「アレキサンダー」と「アインシュタイン」を念仏のように唱え続ける日々で、母からノイローゼじゃないのか疑われた。
後から気づいたのだが、これがアルファベットだと漢字ほど楽ではないが、割とスムーズに覚えられるのだ。
「アインシュタイン」を「Einstein」で覚えておけば、もうちょっと受験は楽だったのかも知れない。

ともあれ何とか高校入試をクリアして、世界史と世界地理と生物を取らなくていい大学を志望校にした瞬間、私の学習意欲はなくなった。
世界史のテストで選択問題以外の部分を全て「カラカラ浴場」で埋めたら中年男性の教師に歴史教員室でマジで泣かれた。
大げさでなく「情けない」と号泣された。
私が悪かった。
反省はしている。
が、本気でカラカラ浴場以外の単語を覚えられなかったんだ。
そこで私は初めて自分はカタカナが全く覚えられないことをカミングアウトした。
実は親にも言ったことがなかった。
世界史の先生(担任でもあった)は考えあぐねた末に「カタカナが分からないんだな?漢字は分かるんだな?じゃあテスト範囲に必ず中国史を入れたら、そこは解けるか?」と言ってくれて、その後2年の終わり(3年は日本史専攻だったので世界史の授業は取らなかった)までのテストに毎回必ずごく一部でも中国史の問題を入れてくれた。
そこだけは完全に正解することで何とか留年は免れた。

高校2年の夏休みの美術の課題で、好きな画家を一人挙げてその人物についてレポートを書くというものが出た。
私はスーラを選ぶと、美術教師に「いいねー(普通科の高校生にしては)マニアックなところつくねー」と感心された。
言えなかった。
本当はルノワールやドラクロワやダ・ヴィンチが好きなのだが、絶対その辺レポートに書くと名前書き間違える確信があるとは言えなかった。
モネとマネは間違える可能性があるので避けた、ゴッホは単に生き様があんまり好きじゃなかったという消去法で選ばれたのはスーラでした。
理由は名前が3文字だったからというだけだった。
冷静になれば北斎とか岸田劉生とか日本人を選べばいいだけの話だったが、何故かその発想はなかった。

本当に何かの障害だと思っているのだが、ネットで調べてもそれらしい病気は出てこないし、今更病名がついてもどうにもならないのでまぁいいかと諦めている。
心理学とか脳医学とかやってる人、研究テーマにいかがでしょうか?
いくらでも取り上げてやってください。

そんな私だが、逆に漢字に関してはむしろ人一倍異常なこだわりを見せる。
太郎さんを太朗さんと書き間違えたら相手が気にしてなくてもすごく申し訳なくなるし、テレビで知らない人の名前が出るたびにどんな漢字を書くんだろう、どんな読み方をするんだろうと気になって仕方ない。
難読地名クイズとか大好物だ。
私の旧姓はすごく平凡な名字だったのだが、結婚して日本に千人くらいしかいない(らしい)珍名になって、めっちゃ嬉しかった。
婚姻届出す時「わぁこれで私も名前の読み方尋ねられるんだぁ」とときめいた。
実際なってみると、レストランとかの電話予約が大抵間違った名前で受け付けられており悲しいだけなのだが。

このカタカナ覚えられない病は未だに治っておらず、海外文学は固有名詞のほとんど出てこないアリスと星の王子さま以外ちゃんと読めないままである。
ちなみに星の王子さまは大好きだが、作者の名前は覚えてない。
サン・テ…?デ…?あたりでいつも止まってしまう。
覚えられないよね!あの名前!
推理ものは好きなので「そして誰もいなくなった」と「オリエント急行殺人事件」は登場人物が全員日本人に謎リメイクされた小説で読んだ。
多分ストーリーは把握できてるはずだが、自信はない。

もちろんこれは漫画にも適用される。
名作と名高いベルセルクやドリフターズはメインキャラが把握できず挫折した。
ジョジョも4部は好きだったのだが、1~3と5部は挫折した。
5部はブチャラティ (ぶちゃ、まで打ったら変換候補に出てきたので間違えずに書けています) チームは死ぬ気で覚えたのだが、次から次へと敵が出てきて無理だった。
ハガレン、ワンピ、進撃の巨人あたりは作者がよく考えてるのか偶然か、ほとんどのメインキャラの呼称が4文字以内の名前になっているので何となくの話は把握できる(ワンピは2年後になったあたりから見てないが)
けものフレンズも私の中では「コツメカワウソ」ではなく「小爪獺」で「ショウジョウトキ」でなく「猩々朱鷺」なのだ。
生物図鑑などで何故生き物がカタカナで書かれているのかが私はわからない。
覚えられないだけじゃないか。

高校のときに歴史的な文学作品くらいは今のうちに読んでおくかー、と学校の図書室に通ったこともあるが、赤毛のアンが読めなくて、日本作品限定でいいという自分ルールを作った。
志賀直哉も谷崎潤一郎も読んだが、赤毛のアンが読めなかった。
ヘルマン・ヘッセなど論外だ。
問題は文アルが海外文豪も入れ始めたことだ。
アリスはむしろ愛している。
固有名詞がアリスしか出てこないし、作者の名前まで3文字×2、画家の名前も2文字と4文字とか最高じゃないか。
だが、ドストエフスキー(どすと、まで打ったら変換候補に出てきたので間違えずに書けています)とか出てきたらどうする?
文豪の名前が覚えられないぞ。

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