0831 8月11日(水)




 一昼夜考え込んだが、俺は妻の携帯で『かず君』に電話をかけてみることにした。電話は思いの他あっさり繋がり、応答したのは俺と同じくらいの歳と思われる男性だった。
 妻のことを男性はよく知っているようだ。聞くと、彼は大学の同窓生で7月31日は他の数人も交えて昼食を共にしていたらしい。
「昼からワインを飲んでいたせいか。皆テンションが上がって、告白大会みたいになっていたんです。そこで神原……じゃない……東さんは大学の時俺のことが好きだったと言われてね、俺はこう答えたんですよ」
 平然と言う彼の声に俺は耳を疑った。
「昔に戻れたら付き合えたかもな、と」
 嫌な予感が俺の背筋を通り抜ける。震える手を押さえ、声を振り絞る。
「最後に、お名前を伺っていいですか」
 その答えに俺は言葉を失った。
「ヒガシカズヤです」



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