私は料理はレシピがあればある程度ギリギリ食べられるものが作れる、お菓子はほぼ無理な料理偏差値なのだが、何故かパンだけは作れる。
何故かというか理由は明白なのだが。
小学2年の必修授業だったのだ。
何言ってるんだこいつ?と言われそうだが、アラフォーの方は小学2年の社会を思い出してほしい。
そう、まだ生活科になる前の話だ。
多分自分の住んでる県や市の特産物や地理について勉強したのではないだろうか。
で、3年で流れるように日本地理に行くのだが、この2年の社会で何をやったかを出身地バラバラの同世代で語り合うと非常に面白い。
それは一旦置いておくとして、私は生まれは明石だが2年から神戸に引っ越した。
さて、神戸名物といえばなんでしょう?
神戸牛?
うん、でも7歳の子供に牛の屠殺や精肉見せたら一生のトラウマになるね!
港?
うん、一応ポートタワーに上った!何もなかったこと以外何も覚えていない!
酒?
7歳児に何させる気だ?
夜景?
7歳児を学校行事で深夜に出歩かせるのか?
有馬温泉?
あそこは富豪がお忍びで来るところだ!市立小学校にそんな金ねぇ!
明石焼き、子午線、姫路城、甲子園、宝塚、手塚治虫、城崎にて、コウノトリ!はい!それ全部兵庫県内の神戸市外だからね!
で、まぁそもそもタイトルから察しがついてるかとは思うが、神戸はパン食が非常に盛んだ。
今は京都に消費量を抜かれているらしいが、あれは欧米の観光客が食べている分を水増ししていると(被害妄想で)思っている。
ありとあらゆるもので二番手三番手に甘んじてる神戸だが、少なくとも洋菓子店とパン屋の質では日本一を間違いなく誇れると思う。
念の為言っておくと、パンの神戸屋!あれは神戸発祥じゃないからな!
神戸市民に「神戸屋のパン美味しいですよね~」って言うのは、香川県民に「丸亀製麺好きなんですよ~」って言うのと同義だからな!
で、そんな神戸っ子が社会見学で行かされるのがパン工場だ。
パン工場で作る過程をひと通り見て、感想を作文に書いて、家庭科室で皆で1日かけて粉からパンを作る。
というとダンナさん(愛媛出身)に「ぴよさん、また虚言癖が…」と言う目で見られたが本当だ。
みかんジュースで炊いたご飯が給食に出るというのよりはリアルだと思うな?
とにかく神戸っ子は割り算を覚える前にパン作りを覚えさせられる。
と言っても30年前の話なので、今は知らないが。
もちろん、ほとんどの子がパン作りはそれ一回きりになるが、私はこのパン作りが非常に性に合っていた。
むしゃくしゃすることがある度に強力粉をこね、机に叩きつけ、発酵させ、最後に一人で美味しく食べていた。
母も祖母も私が無言で強力粉とドライイーストを買ってきたら「あ…なんか知らんけど今はそっとしておかなキレるやつや…」と察していた。
ともあれマンガとアニメと同人誌が99%、パン作りが1%くらいを心の支えにして多感な思春期を乗り切った。
最後にパンを作ったのは実はもう20年近く前になる。
大学受験の実技試験が終わって、合格発表まで一週間くらい手持ち無沙汰になった。
デッサンなので自己採点のしようがないし、今から新生活を思い描いてもし浪人になったら死にたくなる。
とはいえ、絵の先生から課せられた1日20枚デッサンから解放されて今だけは絵は絶対に描きたくない。
マンガを大人買いとかアニメを一気レンタルとかも思ったが、今新ジャンルにハマって浪人になったら浪人生活を真っ当に送れる自信がない。
友達を誘おうにも、本命受験がこれからの子はそれこそ殺気立ってるし、逆に受かった子は新生活の準備に慌ただしい。
学校も3学期はほぼ自由登校だったので、そもそも声をかけづらい。
あのな、おばちゃんがJKの時は携帯はなく、パソコン持ってるのはごく一部のギークのみ、ポケベルか家の固定電話しか連絡手段がなかったんや。
LINEの仲良しグループに「誰か~暇な人遊ばない~?」とか投下できる令和とちゃうからな?
で、まぁその一週間、何をしていたかと言うと
ひたすらパンを作っていた。
あまりに無心で絶対に食べきれない量のパンを一日中作っているので、困った母が毎日近所に配っていた。
趣味で製パンの本を4~5冊持っていたのだが、とりあえずそこに載っているレシピは制覇したと思う。
多分、ド田舎のジャスコで一週間だけ強力粉とドライイーストが消えた怪奇現象とかがあれば私が原因だ。
合格発表は速達(なんかもうちょっと小洒落た名前で電報ではなかったが、即日届く速達郵便みたいなの)だったがインターホンが鳴るまでひたすらパンを捏ねていた。
合格発表の日は、今思えば母も何か言わないと落ち着かなかったのだろう。
パンを捏ねる私の横で「受かってるかな~、手紙来ないから落ちたんちゃうww」とか言って私に顔面にパン生地をぶつけられた。
ママパンマン!娘を思い遣れる新しい脳みそよ!
まぁ、なんだかんだで速達(もどき)が来たのは夕方遅くだった。
結果は無事に受かっていた。
合格発表のシーズンになると、受験勉強より地獄のデッサンより、あのひたすらパンを捏ねていた一週間を思い出すのだ。
そんな私が何故それ以来パンを作っていないかと言うと、簡単なことだ。
母は私が大学で一人暮らしをすると、当たり前だが私のストレス解消パンが食べられなくなった。
しかし母は自分では作らないくせに無類のパン好きだった。
何度でも言うが実家は限界集落なので小洒落たパン屋などない。
毎日焼き立てパンを食べたいほどグルメではなかったが、たまにはスーパーの超熟より美味しいパンを食べたくなった。
そこでホームベーカリーを導入していたのだ。
帰省した私は、材料を放り込んで一晩待つだけでふかふかパンが焼けていることに諸行無常の響きと盛者必衰の理を感じ、パン作りをやめてしまった。
ホームベーカリーは美味くて便利だよ☆(結論)
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