お菓子の話

昨日のバレンタイン、久々にお菓子を作った。

ガトーショコラだが普通に作れた。

実はお菓子らしいお菓子を作ったのは10年近くぶりだ。

多分結婚してすぐか結婚前に手作りチョコを所望されて作った記憶はあるが、それっきりだ。

これでも小さい頃はお菓子やパンを割と作っていた。

普通にクッキーくらいは焼ける。

ただ高校の時に入った美術部が何故か異常に製菓偏差値が高かった。

なんでもない日に普通に「明日フルーツタルトでも作ってくるよ」とか言うやつがゴロゴロいた。

鶴でも折ってくるようなノリでミルフィーユやチーズケーキを作ってくる。

しかもほぼ全員だ。

普通の高校の普通科の美術部である。

調理部と兼部している子もいたが、大半はそうではない。

製菓に関する偏差値が90オーバーみたいな謎の部だった。

一応、私も悪あがきでクッキーを作ったことがあったが、皆が「うん…まぁ…普通に食べれるけど…ぴよりちゃんはもう二度とお菓子作ってこなくていいよ…」と禁止令が出ていた。

多分、自分で言うのもなんだが料理の偏差値55くらいはあると思う。

レシピと材料さえあれば、その通りに作ることができる。

でも周りが軒並み90超えなのだ。

普通に店に出せるレベルのケーキをホールで作ってくるのだ。

ちなみに進路に調理関係を選んだ子は一人もいない。

なんでだよ!!!!!!

私の他にもう一人、男子部員で「オレ菓子は作れん」と作ってこない子がいた。

山岳部兼部のアウトドア少年・川本くんだ。

もう一人底辺がいた!

やった!

僕はひとりじゃない!

「魚を刺し身にしたり、鶏を〆て捌くのならできるけど。この前やっと鹿の血抜き覚えた」

だまされた!

裏切った!!

鹿の血抜きを基礎教養にしていいのはゴールデンカムイの世界だけだ!!!

やっぱ最低だこいつ!!!!

ある時、美術部員で誰かの家に集まってお菓子を作ろうという話になった。

他の部員は親が厳しかったり、駅から家まで車じゃないと行けなかったり、アパート住まいだったりして、消去法で私の家が選ばれた。

「ぴよりちゃん家…ハンドミキサー……ないよね?」

うん、ないけどね。ないけど、ない前提で話さないで。

というわけで、ハンドミキサーは他の子が自宅から持ってくることになった。

一度、製菓偏差値90が集まれば手際はいいものだ。

私は後ろでマンガを読んでいた。

ふと、誰かが言った。

「ぴよりちゃん、ゴムベラってどこにあるの?」

「え…ゴムベラ…?」

そんなもの家で見かけた覚えがない。

「母さーん、ゴムベラってどこだっけ?」

その瞬間、母が泣き崩れた。

「ごめんなさい…普段お菓子作らない家にはゴムベラなんてないのよ…」

さらに誰かが追い打ちをかけた。

「す、すみません!まさかゴムベラがない家がこの世にあるなんて思わなくて!!!」

結局その時はしゃもじか何かで代用したと思う。

何を作ったか忘れたが、普通にお菓子を食べて解散した。

しかし翌日、母は山を二つ超えたショッピングモールに行って使う予定もないゴムベラやハンドミキサーを買ってきた。

よほどショックだったのだろう。

結局ゴムベラもハンドミキサーも一度も使われないまま20年以上が経つ。

多分劣化してボロボロになってると思う。

昨日のバレンタインでガトーショコラを作る時にゴムベラがいるなー、百均行こうかなー、と思ったら何故かしっかり引き出しに入っていた。

母が持たせてくれたわけではない。

多分実家を出る時に台所用品を色々買った時に一緒に買ったのだろう。

が、今の家に引っ越して4年以上経つが、初めて使った。

どうやらあの高校生の時の記憶が「とりあえずゴムベラは必要」と刷り込んでしまったらしい。

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