ついでに

  転んで怪我したついでに
  思い出話でもしたいと思ったり。
 
  さてさて
  最初に皆さんに聞きたいことがある。
  皆さんは見ず知らずのコンビニ店員に
  「お大事に」と言われたことがあるだろうか。
  あれは忘れもしない
  一人暮らしを初めて最初の
  春か夏か……ひょっとしたら秋だったかもしれない。
  (忘れてる忘れてる)
  それはともかく
  私はようやく慣れ始めたチャリで
  すっかり遅くなったサ-クルの帰り道だった。
  暗い夜道で一人自転車を走らせるうら若き女。
  この次に起こることは
  もう皆さんならば察せるだろう。
 
  どべしゃ
  (何もないところで何故かこける音)
 
  痛がりながらも立ち上がった
  私が最初に見たのは暗がりでもそれと分かる
  深紅の血、だった。
  もちろん私の。
  あ、頭からも出てるような気がする。
  よくよく調べてみると
  額と腕と足からかなりの出血が。
  これはさすがにヤバいかも……早く家に……
  そこで初めて重大なことに気がついた。
  家に帰ってどうするんだ?
  我が家には包帯も消毒液も絆創膏すらない。
  一人暮らし始めたところの人間が救急セットを
  買いおいているわけがない。
  とりあえず近所のス-パ-はもう閉まっているから
  コンビニだ!
 
  ダダダダダッ
  (コンビニに走る音)
  バンッ
  (コンビニのドアをあける音)
  ガッッ
  (消毒液と包帯を取る音)
  ダンッッ
  (レジに置く音)
 
  「いらっしゃ………」
  マニュアルを叩き込まれた
  バイトの兄ちゃんの笑顔が凍り付く。
  そりゃそうだろう。
  深夜11時近くに顔と手足から血をダダ流した女が
  息せき切って消毒を差し出してるんだ。
  これでビビらないバイトを作れるなら
  ローソンはコンビニやめて
  人材派遣業でもやった方がいいよ。
  バイトの兄ちゃんは
  それでも数秒後には事態を察してくれたらしく
  少々血痕のついた包帯の箱を
  黙ってバ-コ-ドに通してくれた。
  最後に心底気の毒そうな顔で
  「お大事に」とまで言ってくれて。
 
  翌日、包帯とカサブタまみれになりながら
  友人にその話をしたら
  「あんた絶対そのバイトの人に
   後で笑い話にされてるよ」
  確かに。
 
  以上、
  自転車事故には気をつけろと言う話でした。

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