POEM

自由詩

まぼろし

黒いおばけが見えるというと そんなものはいないよという 呻く声が聞こえるというと そんな音はしないよという あなたはどこにいるのというと 僕はどこにもいないよという
自由詩

切除

こころは取り除けないのか こころは切り取れないものか 肝臓がない人がいる 胃を取り去った人がいる みんな 生きてはいけるのに こころを脳を切除して 生きる術はないものか
自由詩

年の瀬

カレンダーを買いました ペンギンの絵と ねこの絵と 日めくりに 週めくり 卓上もあります この表紙をめくるまで 私の心はあるのでしょうか この家の中にあるのでしょうか 私の心が消えたとしても 暦をめくるのを 忘れぬように あなたは そういう...
自由詩

あとの祭り

予兆はありました 風邪を引く時 咳き込むように 喉が痛く なるように 予兆はありました ただそれが インフルエンザか 死に至る肺炎か または 1日寝れば治る 喉風邪なのかは 分かりません 実は今でも 分かりません 私は人より ほんの少し 頭...
自由詩

遺書

私の心が止まる日も あなたは仕事に行くのだろうか 私を体を生かすには 働かなきゃと言うけれど 私はただ一日だけ 何の予定もなく テレビもスマホも切って あなたと取り留めなく話し お腹が空いたら手を繋いで コンビニに行き 夜通し語り明かしたか...
自由詩

ごちそうさまでした

好き嫌いはいけません 私の死体は あなたがきれいに 食べてください 脂身が少し多いけど そこは大目に 見てください あなたは ホルモンが嫌いなので 少し心配 だったりします タンは大好き でしたよね 柚子塩で美味しく 食べてください 食べ残...
自由詩

スープ

野菜を乱切りに ありったけ放り込んで クタクタになるまで煮込み フツフツ湧き溢れるだけの 旨くもないスープのような こころが 吹きこぼれないよう 全力で蓋を抑えてる ひとは言う 火を止めればいいのにと 火を消せば すべて上手くいくと 知らな...
自由詩

ご案内

本日も日和見電鉄をご利用いただき誠にありがとうございます ただいま三百十五番線を通過します電車は明後日方面行き特急こころでございます 暴走しがちで脱線しがちな電車ですので皆様必ずくれぐれも白線の内側にお下がりください 白線の内側にいる者まで...
自由詩

かぞえうた

一番きれいな靴を履き 二兎を追った後悔で 三界には家なしと 四階に駆け上がる 五本の指を空に向け 六限の鐘が鳴る 七粒の星数え 八方塞がりの意味を知る こころえているのです とんと跳び降りる     百万回生まれ変わり またあなたに会いに行...
自由詩

夏の猫の噺

夏の盛りに猫を拾った 痩せ細って泥を浴びしかし顔立ちのいい三毛猫で文月なので「ふみ」と名付けた 暑い夏を共に過ごし瞬きする間に大きくなり 秋には月を眺め酒を酌み交わし 初めての雪に戸惑いコタツで暖まり 春は何かを恋うて一人と一匹で夜中泣いた...