兄とねこの話

知ってる人は知ってると思うが、私には重度アスペの兄(43)がいる。

昔は蛇蝎のごとく嫌っていたが、今は別にそんなことはない。

大好きでもなければ、まぁ嫌う理由もないかなー、という感じだ。

じゃあ、なんで滅多に兄のことを書かないかと言うと

わからないのだ。

理解の範疇を超えまくっているのだ。

兄は数学アスペで5桁までなら掛け算割り算を電卓並みの速さでできるし、微分積分が分からない人の気持ちが分からない。

声で説明するのは苦手だが、数学の証明問題や解き方の解説を求められると、めちゃくちゃ分かりやすい文章を書く。

しかし絵本が読めない。

文字は読めるし単語の意味も分かるのだが、何が起こっていて何が面白いのかが分からない。

コミュニケーション力は幼稚園児以下である。

唯一の趣味が野球観戦である。

野球は数字で割り切れるらしい。

何を言ってるのか私にはさっぱりわからないが、兄がそう言っていた。

で、そんな兄も何だかんだあって障害者向けの作業所に通って2年くらいになる。

野球友達とかもできたらしい。

ある日、兄が母に言った。

「野球の話ができない人とは何の話をすればいいんだろう?僕は他に話題がないけど、どうやって話題を見つければいいのかわからない」

「あんた何言ってんの?毎日ねこ3匹の世話してるじゃない。ねこの話したらいいのに」

「1回しようとしたけど『どんなねこ?』って言われて答えられなかった」

ちなみに兄はらくらくスマホを持っているが、電話以外は全く使えない。

写メなど論外だ。

そこで初めて母は気づいた。

「あのね、ふーちゃんは『三毛猫』てねこなの」

「みけねこ」

「白と黒と茶色と3色あるでしょ?だから3つの毛でみけねこ」

「みけねこ」

「じゅんちゃんは茶色でタイガースみたいなトラの模様が入ってるでしょ?だから『茶トラ』」

「ちゃとら」

「なっちゃんはいろいろ混ざってるけど、一言で言うなら『キジトラ』」

「きじとら」

43歳と71歳の会話である。

兄はねこを「うちのねこ」としては認識していて、毎日エサがどのくらい必要か、どの子が何味が好きか、何時くらいに起きるか、昼寝するならどこがお気に入りか、トイレは何日おきに掃除が必要か、猫砂はどこの店が安いか、などは完全に把握していたが、ねこに種類があり、それに名前がつけられているなど夢にも思わなかったのだ。

数学アスペこわい(結論)

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