寒い街で育ったくせに
風花の意味が分からなかった。
全て嫌いな冬を告げる
雪、と呼んでしまってよかった。
暖かい街でひとり
暮らし始めて三年が過ぎる
故郷の駅は
あの頃の面影すらなく
定期で通り抜けていた改札で
切符を買う。
見なれた背中とすれ違い
振り返る。
あれは一体誰だったのか。
この道が
どこに続くか
分からない。
慣れた街で
私はひとり
アリスになって
途方に暮れる。
たとえばそれは
深い夢のような
悪い夢のような
でも決して
夢でないような
ぼやける頭を押さえる
私の肩に
落ちた
ひとひらの白いかけら
「風花か」
呟いて
思い知る。
私はもうとうに
この街の住人では
なくなっていたことを