料理芸術家
君を
僕はそう名づけた
テキストも
計量カップも
味見すら必要としない
君を
僕はそう名づけた
その日の
気分と機嫌を
そのまま皿に盛る
君を
僕はそう名づけた
煮物が食べたいと
さっき言ったはずなのに
なぜだろう
君は
ツナとコーンを
肉じゃがに
放り込もうとしている
恋は盲目
鍋もまな板も
抽象画の
キャンバスでしかない
君の作る
デタラメな道を
後ろから
黙って正すのが
僕の使命だというのなら
どこまでも
どこへでも
さぁ
寄り添って行きましょう
料理芸術家
君を
僕はそう名づけた
恋は盲目
今日も今日とて
気まぐれな君の
ひとりごとを
フライパン片手に
「まぁ、いいか」を
繰り返す君の
ひとりごとを
ダイニングで笑いながら
いつかできる
いつかきっとできるはずの
料理芸術家の大傑作を
夢に見たりしてるのだ