君がいなくなってから
はじめて
買ったのは
近くのス-パ-で
ワゴンセ-ルに出されていた
紺のバスタオルだった。
君の声を払拭するように
大きく広げ
シャワーでぬれた頭を
きれいに
きれいにふいていく
僕達の別れの香りは
例えようにも
他にない、けれど
あまりにも
ありふれた
そんな
新品のタオルの香りだった。
君に言えばきっと笑うだろう
きっと誰もが分かる
きっと君も分かる
そんな
新品のタオルの香りだった。
恋と言うにはあまりに
他愛なく
すぐに消えて
二度と蘇らない
そんな香りの余韻に浸りながら
今頃になって
君の声が聞きたい
中元にタオルを一箱送り
手紙を添えるくらいなら
ひょっとしたら
私にも許されるだろうか
言いたいこと
話し足りないことなら
たくさんあったはずなのに
君に伝えたいことといえば
元気ですか?
笑っていますか?
それだけが、気がかりです。