蝉よりも
蚊よりも
短き命よ
こんな小さな
白い命よ
染み入る私の
ココロの脆さを
掘り返さないでくれないか
夜半すぎの来客
コンビニ嬢の友人が
バイト帰りに
差し入れてくれた
袋いっぱいの
期限切れ商品
たった今まで
ケースに並べられてた
三角形の命は
二十四時間の役目が
終わると
こうして
タダのゴミとなる
この海苔を作るのに
一体どれだけの時間がかかった
とか
この梅干しは
一体どんな梅の木だったか
とか
ましてや
米一粒に七人の神様が
とか
この世界には
さほど関係ないことらしい
狭いベランダで
曇った夜空を
見上げて食べる
さっき
息絶えたはずの
蝉よりも
蚊よりも
短い命を
この街の
ほとんどの人は
こんな命は知らずに過ごす
頼むからどうか
淋しい顔を
私に見せないでくれないか
八十八円の
白い命よ