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てもちぶたさん


 フリーターなんて言えば
 それなりに
 聞こえはいいけど所詮
 休日不定
 将来不定の
 その日暮らしでやっている。
 


 何も予定がない
 火曜日
 とか、が一番困る。
 何度も読んだマンガを
 めくりながら
 今日することを
 必死にぼんやり考える。
 


  こういうのを
  なんて言うんだっけ。
  ああ、そうだ。
  手持ち無沙汰。
  そう言えばいつだったか
 てもちぶたさん、
  なんてこと
  言ってた人がいたっけな。
 


 てもちぶたさんの
 お仕事は
 手持ち無沙汰な人の
 ひまつぶし。
 お話したり遊んだり。
 この不景気に関わらず
 お得意さまは
 増える一方。
 休む間もなく
 働いてたら
 ぶたさんは少し
 やせたらしい。
 


 今日も今日とて
 私のまわりに
 小さなぶたさんが
 やってくる。
 「暇だぁ」と
 私がつぶやく度に
 ほんの少しだけ
 ぶたさんも愚痴を
 こぼしたりもする。
 私のところに
 よくやってくる
 てもちぶたさん。
 最近娘に
 構ってもらえなく
 なったことが悩みらしい。
 ぶたさんの世界も
 ぶたさんなりに
 やっぱり結構大変らしい。
 


 私が用事を思い出し
 パソコンに
 向かい始めると
 ぶたさんは
 さっさと去って行く。
 請求書の代わりに
 新しい詩や話題を置いて
 私が当分
 てもちぶたさんを
 呼びつけなくてもいいように。
 


 ほら、
 あの雲の向こう
 夕焼けの朱にまぎれて
 まだ少し重い体で
 走りながら
 慌ただしい世界の
 間を埋めるために
 がんばる
 それが
 てもちぶたさん。


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