0831
8月30日(月)
「何を馬鹿なことを……」
「あなたはっ!」
俺は思わず声を荒げ、妻のスマホを義父に差し出した。
「この携帯の暗証番号を解除できますか!」
「何を言うんだ?」
「いいから!やってみてください」
義父は戸惑った表情を見せる。
「暗証番号……」
「誕生日とか……?えっと……」
「暑い季節だったか?夏休みくらいの」
そうなのだ。
この人は娘の誕生日を覚えてもいない。
凜があんなに大切にしていた8月31日を祝ったことすらない。
キョロキョロと目線を移す31歳の赤ん坊の手を俺は引いた。
「行こう、凜」
帰ろう。俺たちの家へ。