0831
8月1日(日)
何から話せばいいのだろうか。今となっては分からない。
単なる物書きの性だ。忘れないように書き残しておこうと思う。
これは俺が愛した妻と、恋人と、見知らぬ少女のたった31日の話。
妻がかなり早く起きていた。出勤用のパンツスーツを着て朝食を作っている。
「どうしたんだ?今日は仕事休みだろ?」
「え?仕事よ。火曜だもん。根詰めすぎて曜日感覚狂ってるの?」
俺は在宅勤務のライターで、よく曜日感覚が狂うことがある。慌てて新聞を確認したが、そこにはしっかり『八月一日(日曜日)』とある。
妻に見せると小首を傾げて大きな目で何度も瞬きをした。
「……今日って8月31日でしょ?」
「お前は……一ヶ月間違えてるぞ」
「そんなはず……」
しかし、自分の携帯の日付を見て、やっと妻の方が間違っていることを認めたようだ。
「おかしいなぁ」
「疲れてるんじゃないのか。休んでこい」
2013年31歳の夏、それが始まり。