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ソーダキャンディで
空腹をごまかしてみる
さしこむ西日の中
微睡みに沈みながら夢に見るのは
明日の予定や
今日の失敗より
昔、恋をしていた少女のことの方がいい
陸上部のエースだったあの人への
想いを友人に語っていた
飽きることもなく
いつもいつも語っていた
いっしょに帰ろうと
凍える冬風の中待ちぼうけ
紅い顔で偶然を装った
今ではもう
笑い話にしかならない
卒業式の日かけられた言葉が
何だったのか、
もうどうやっても思い出せはしない
目覚めると日は暮れていた。
大きなキャンディも
下の中に残る
わずかな感触以外は
もう分からなかった
溢れ出す他愛もない記憶に
胸を蹴られ
ふいに涙が頬をつたった
何故だか
きっと誰にも分からないけれど
生きて行くには
何の価値もないことだけど
私は確かに恋をしていた。
あの頃のように恋をすることは
もう、きっとできない、と思う。
むせかえる程に
甘く
青い
ある少女の記憶だった