Artist Web Siteたけてん

十九


  三つのとき
 父は知らない人だった
 仕事に追われる忙しい父は
 娘と顔をあわす暇もなく
 たまの休みにも幼い目には
 父は知らない人だった


 
  八つのとき
 父は怖い人だった
 私がわがままを言うと怒る
 いつしか私は父の前では
 顔色をうかがってばかりで
 父は怖い人だった


 
  十二のとき
 父は楽しい人だった
 大好きなお酒に酔うたびに
 時には酔っていなくても
 つまらない冗談を繰り返す
 父は楽しい人だった


 
  十八になって
 ようやく気づいた
 父は優しい人なのだと
 私よりも私の未来を読むのが上手な
 一番の理解者だったのだと


 
 私と父の関係は
 ゆっくりと育って行く友情のようで
 年を重ねるごとに
 印象もゆっくりゆっくり変わって行く


 
 片方が恋をすれば
 友情は壊れやすくなる
 と、ドラマでよく言いますが
 おとうさん
 私たちの友情は大丈夫ですか?


 
 私の大好きな人にいつか会ってくれますか?
 石投げつけたりしないでね
 あなたと同じくらいお酒と野球が大好きで
     同じくらい優しいやさしい人だから


 
 もうすぐ私は十九になります


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