0831
8月12日(木)
俺は押し入るように妻の家に入った。
妻の部屋のドアを強く叩く。
「凛!凛!いるんだろ!?」
返事はないが、俺は続けた。
「お前、歳を遡っていたふりをしていただけだったんだろ!?昔に戻りたくて!東さんと……大学の東さんと一緒にいたくて!」
おかしいとは思っていたのだ。
1日に1年ずつ時を遡るだなんて。
彼女は俺を愛していたわけではない。『かず君』なら誰でもよかったのだろう。苗字が『東』なら尚更だ。
そして、冗談のような言葉を真に受けて、携帯のアドレスから俺の番号を消し、大学時代の『かず君』の所に戻ろうとした。嘘をつき、演技をして。
全部、全部嘘だったのだ。
それでも……俺は……。
「もう全部分かったんだ……」