0831
8月8日(日)
妻のスマホの発信履歴は7月31日の朝9時で止まっている。そこに記されていた文字は『かず君』だった。
しかし、俺はその時間に電話をかけられていない。履歴を遡ったが他の俺とのやりとりは残っている。その一つの発信だけが俺の携帯にかけられていないのだ。
妻に会いに行くことにした。
妻と付き合い始めたのは24歳の誕生日パーティーだった。親しく話せるのはこれが最後かもしれない。
新しい気分で実家のインターホンを押す。
「あの……東で……」
「帰れ!」
返って来たのは義父の怒鳴り声だった。義両親はこれまで俺にとても好意的でこんな扱いを受けたことはない。何を言っても取りつく島がなかった。
俺は重い足取りで帰りワインを呷った。