かむがたりうた 第捌章「マヨイゴ」




  一

からまつの林を過ぎて、

からまつをしみじみと見き。

からまつはさびしかりけり。

からまつはさびしかりけり。

  二

からまつの林を出でて、

からまつの林に入りぬ。

からまつの林に入りて、

また細く道はつづけり。

  三

からまつの林の奥も、

わが通る道はありけり。

霧雨のかかる道なり。

山風のかよう道なり。

  四

からまつの林の道は、

われのみか、ひともかよひぬ。

ほそぼそと通ふ道なり。

さびさびといそぐ道なり。

  五

からまつの林を過ぎて、

ゆゑしらず歩みひそめつ。

からまつはさびしかりけり、

からまつとささやきにけり。

  六

からまつの林を出でて、

浅間嶺にけぶり立つ見つ。

浅間嶺にけぶり立つ見つ。

からまつのまたそのうへに。

  七

からまつの林の雨は

さびしけどいよよしづけし。

かんこ鳥鳴けるのみなる。

からまつの濡るるのみなる。

  八

世の中よ、あはれなりけり。

常なれどうれしかりけり。

山川に山がはの音、

からまつにからまつのかぜ。



        北原白秋「落葉松」



















「じゃあ、いってきます」

 安と西夜は声を合わせて言った。

「はーい、行ってらっしゃいー」

 琉真と東子が手を振り見送る。















「東子さんは行かないんですか?」

 東子は黙って頷いた。

 そして琉真の顔をじっと見る。

「な、何ですか?僕の顔に何かついてます?」

 少しの沈黙の後、東子の指先が琉真の首の包帯にそっと触れる。

「あぁ、気になりますか?すみません。しばらくは取れないそうなんです」

 東子の顔が哀しげに曇った。

「大丈夫ですよ。痛みはとれましたから」

 それでも心配そうな顔はやめない。

「そうだ、気晴らしに近所に散歩でも行きましょうか。東子さん、ほとんど家から出ないでしょう。それじゃ東子さんの方が病気になっちゃいますよ!」

 しかし、首を横に振る。

「どうして?って答えるの無理ですよね」

 琉真は少し考え穏やかに尋ねた。

「外が怖いんですか?」

 一瞬の沈黙の後、頷いた。

「怖くなんてないですよ、ほら」

 東子の背を軽く押した。

「西夜が気になるならメモでもおいておけばいいですよ。この前の安さんの引越のときも外に出ていたじゃないですか。牢屋に入れられてるわけじゃないのですから」

 差し延べられた小さな手をそっと握った。















「大丈夫かなぁ、琉真と二人きりで」

「不安なら連れてくればよかったのに」

 電車の揺れる音に混ざりながら、心配そうに頭を抱えた。

「うん、けど外に連れ出したりしてなきゃええんやが…」

「?」

「砂城ちゃんや栄さんは知ってるからええんやけど、琉真は東子の能力知らへんから…」

「能力って…『預言』でしょ?」

「それはそうなんやど厳密には違うんや。あーますます気になって来た!」

「過保護すぎだよ、西夜は」

「過保護やない!愛情って言うてよ!」



「小夜子さん、西夜です。おじゃまします」

 伊邪那美の家に入ると、待ち構えていたように世話係の小夜子が玄関で頭を深々と下げた。慣れたもので、西夜は会釈すると階段を上った。

「伊邪那美様」

「どうぞ、西夜、安さま」

 声を待って西夜が扉を開ける。伊邪那美もまた、来訪を知っていたかのように窓辺に立って頭を下げた。

「いらして下さって有り難うございます」

「い…いえ」

「今まで黙っていて申し訳ありませんでした。お話しいたします。太榎の家のこと、能力のこと」















「あっちに広い公園があるんです。僕もついこの前見つけたんですがいい所ですよ」

 黒いワンピースと濃紺のコート姿で琉真に手を引かれて、東子はゆっくり歩いて行った。

「すぐに着きますよ」

 相変わらず視点の定まらない東子に琉真は笑いかける。しかし虚ろな表情は変わらない。人とすれ違う度に、何かに怯えるように琉真の手を強く握った。商店街に差し掛かったところで、東子は足を止めた。

「どうしました?」

 人通りの多い道の途中、ためらうように辺りを見渡す。喧噪の中で東子は両耳を手で強く押さえ、地面に膝をついた。

「…………!」

 声にならない悲鳴

「と、東子さん!」

 琉真の細く白い両腕にすがりついて、大粒の涙をこぼす。

 東子の唇が「たすけて」と声なき声をあげる。

「た、立てますか?」

 涙をこぼしながら、東子はよろよろと立ち上がった。

「人の少ない所の方がいいんですね?」

 両耳を押さえたまま、何度も何度も必死に頷く。

「ごめんなさい、帰りましょう」

 言うと、肩を支えながら、一歩一歩引き返した。















「太榎の家が言霊遣いだというのは、ご存知ですね?」

 安は頷いた。

「西夜や栄のような能力者は血統ではなく全くの不規則で受け継がれますが、言霊遣いの能力は世襲制です。万夫さまが亡くなられて、安さまが次の代の能力者になったのです」

「その…言霊遣いってのは、どんなことでもできるのですか」

「はい、本気で望み言葉にすれば……例えばですが……世界を滅ぼすこともできます」

「そんな力、俺には……」

「重荷でしょう。でもこれが太榎家の後継ぎの宿命なのです」

「宿命って…そんな簡単に……!」

 声を荒げようとして、伊邪那美の表情に陰りが見えた。

 安は口をつぐむ。

「俺には……無理です。いっそこと、一生口が利けなくなれば…」

「よう、そんなん言えるな!」

 黙っていた西夜が声をあげた。

「安、知っとうやろ!見とうやろ!東子や!東子を見て口が利けんのが、どんなに辛いか分かっとうやろ!」

「ご…ごめん」

 軽率だった。安は口を押さえた。

「伊邪那美さん、聞きたいことがいくつか…」

 RRRRR……西夜の胸ポケットから音が鳴った。スマホを取り出す。そこに表示されてたのは「時実神社」の文字だった。

「ばあちゃん?……あ、琉真?え?……何?ちょっと落ち着いて…うん…分かった」

「西夜、どうしたの?」

「緊急事態!東子が倒れたって!ウチ帰るわ」

「って残されても、俺帰り道分からないし…すみません、伊邪那美さん俺も失礼します。話はまた今度…」

 慌てる二人と対照的に、伊邪那美は穏やかな笑顔のまま頷いた。

「では、またの機会に。お待ちしております」

 彼女は笑って見送っていた。















「東子!」

「西夜、今眠ったところです」

 声を抑えて返す琉真の横には、布団に横たえられて静かな寝息を立てる東子の姿があった。

「何があったんや?」

「それが外に連れ出し……」

  パンッ

 琉真の言葉が終わらないうちに、西夜が頬を打つ音が部屋に響いた。

「外に出したんか!」

「西夜、落ち着いて。とにかく部屋を出よう。東子ちゃんが目を覚ますといけないから」

 安の言葉に西夜は渋々と従った。















「あの…西夜さん…僕……」

「東子はあらゆる人や物の未来が全て見えるんや」

「え?」

 琉真と安は同時に声をあげた。

「……だから人ごみに連れて行ったりしてまうと、パンクしてパニックを起こす。何も閉じ込めるためにこんな神社でじっと暮らしてるわけやあらへん」

「ご…ごめんなさい」

 琉真の青い瞳からポロポロと涙がこぼれる。

「ごめんなさい…ごめんなさい。ごめんなさい」

 西夜は険しい表情のまま何も答えない。

「西夜、もうそのくらいで…」

「ごめんなさい!」

 琉真は駆け出した。















「西夜、言いすぎ!」

「安は琉真の肩を持つんか!」

「肩を持つとかじゃない。少なくとも何の説明もなく叩く西夜よりは……いや、それを抜きにしても琉真は俺に似てるんだ」

 父親に拒絶された自分に

 父親を待ち続けていた頃の自分に

「俺、追いかけるから!」

「勝手にしなよ」

 安は石段を下りた琉真の後を追うが下りた先の十字路に琉真の影はなかった。

  『ごめんなさい』

 何度心の中で繰り返した言葉だろう。傷は癒えるものではなくて乗り越えて行くものだと教えてくれたのは西夜だった。琉真にもそれを教えてあげられればと思っていたのだが…。

 居場所を知ってそうな人で当たりをつけたのだが砂城の携帯は電源が切られていた。栄の電話番号は知らないし、家に行ってみるか。















 琉真は駅の雑踏で辺りを見渡していた。自分の行ける場所は一つしかない。駅の改札をくぐった時、ハッと目を見開いた。見慣れた焦茶のクセがある髪に、遠くからでも分かる穏やかな空気「あづみ!」琉真は小さな体で必死に人ごみをかき分ける。

(いるはずない。こんなところにいるはずないんだ。でも…)

 可能性はあった。ひとつだけ。

 『彼女が今ここにいる可能性』

 ホームに入り視界が開けた時には、もうその姿は影もなかった。















「何しに来た?」

 返ってきたのは予想通りの反応。

「あの…琉真が家出て行っちゃって……」

「何故私に聞く」

「えっと…西夜が怒ってて、他に知ってそうな人いなくって」

 髪もしばっていない、ヨレヨレのシャツにGパン姿で面倒そうに革手袋をはめながら、栄は頭をかいた。

「私が知るか。あんなガキのこと」

 『栄クンは琉クンのこと嫌いだもんね』以前聞いた砂城の言葉がリピートされる。

「で、でも何か行きそうな場所とか!」

「帰れ。ヤツに関わろうとするだけで虫酸が走る」

「先輩!それがあんな小さい子に向かって言うことですか!」

「貴様はヤツのことを知らないからそんなことを言えるんだ。あいつは雪を…いや、貴様には関係のないことだ」

 言うと、栄は扉を閉じようとした。

「先輩!琉真が先輩に何をしたかは知りません!でも一人で!家にも帰れなくて!寂しくないわけないじゃないですか!不安じゃないわけないじゃないですか!お願いします!行きそうな場所を教えてくれるだけでいいんです!」

 頭を深く下げる。

「自分の住んでた国を出て、ずっと病院で暮らしていて、退院したのに追い出されて!東子ちゃんを気晴らしに連れて行っただけなのに!右も左も分からなくて!迷ってるんですよ!お願いします!心当たりがあるなら!」

(先輩は殴られたことなんてないだろうから)栄の能力を思って口をつぐんだ。

 短い沈黙の後で栄は部屋に入った。安もそれに続く。

「一日、入力作業で手を打ってやる」

 近くにあったメモ帳に何かを書いて、ちぎって渡した。

「そこにいるとは限らないがな」

 言うと追い出すように安を放り出した。















「東子、起きた?」

 軽い食事を持って、西夜は襖を開けた。

 しかしそこに眠っているはずの東子の姿はなかった。

 布団だけそのままで、ガランとしている。

「東子!」















「西夜クン、トコちゃ〜…って、どうしたの?そんなに慌てて」

「東子!東子が!」

 偶然、神社に立ち寄った砂城は、ただならぬ慌てぶりの西夜の両肩をたたいた。

「ちょっと!まずは落ち着いて!」

 西夜は一呼吸おいて事のあらましを説明した。

 それを聞いた砂城はため息をついた。

「西夜クン、ちょっと目閉じて」





  パンッ





 軽い音が響く。

「これは琉クンの分」

 頬を抑える西夜の顔をぐいと正面に向けた。

「いい?琉クンは大事な人みんな失って頼る人も場所もないのよ。西夜クンが琉クンのお兄さんになってあげなきゃいけないの。トコちゃんのお兄さんであるのと、同じ分だけ琉クンにも愛情注いであげなきゃ。それができないなら気軽にここに人を住まわせちゃダメ。分かった?」

 砂城は厳しい顔で言った。















 古い無人の一戸建ての庭に琉真は立ち尽くしていた。

「…父さん……あづみ……」

 雑草が生え放題の庭で辺りを見渡す。洋館のような造りのあばら屋の前で、泣きながらうつむいていた。

「…父さん…」

 不意に肩を叩かれる。驚いて振り返ると、そこにはコート姿の東子が立っていた。慌てて琉真は目を拭う。

「どうしてここが…『預言』ですか?」

 東子は黙って頷く。

「…ごめんなさい」

 琉真の白い両手を、東子の手が暖める。

「東子…さん」















 栄の地図に書かれたのは電車で数駅の住宅街だった。手入れされた家並みの中で、ひと際目立つ無人の家。庭から二つの影が見えた。

「東子ちゃん?」

琉真が振り返る。

「安さん」

「よかった、ここにいた」

「どうしてこの場所が…」

「旗右先輩が教えてくれた」

 ああ、と微笑む。

「ここね、あづみが死ぬ前に住んでいた家なんです」

「あづみって琉真のお父さんに殺されたっていう…」

 琉真は笑って頷いた。

「日本に何度か来たことがあって、あづみと二人で遊んでました。僕は友達もほとんどいなかったから本当に楽しかった」

 大きく伸びをする。

「でも…」

 俺達は本当に孤独で

 孤独なのに寂しがりで

 誰かが傍にいないと生きて行くことすらできなくて

 だから

「俺は頭も要領も悪くて、ひょっとしたら琉真を傷つけることを言うかもしれない」

 頬を一筋の涙が通る。

「でも…でも…傍にいるから」

「どうして安さんが泣くんですか?」

「琉真が寂しいから琉真の代わりに泣くんだよ」

 それはひどく身勝手な思い上がりかもしれない。

「さみしい?」

 でも

「あづみが死んでから、胸に穴が空いたようなんです。これが…さみしいってことなんですか?」

 安が答えるよりも先に、東子が自分より一回り小さな琉真を強く抱きしめた。

「東子さん?」

 安も二人の上から肩を抱いた。

「寂しい時は泣いてもいいんだよ」

「泣いたら……ダメなんです。泣いたら……父さんに怒られる…嫌われる」

 あぁ、やっぱりだ。やっぱり琉真も自分と同じだったんだ。

「俺は、怒らないし…嫌わない。東子ちゃんも、ねぇ?」

 東子は安の顔を見てコクリと頷いた。琉真の両目からぶわっと涙が流れ出す。

「……み」

「ん?」

「あづ…み……お父さん……あづみぃ……」

 一体この小さな肩にどれほどの重荷を背負ってきたのだろう。

「あづみ………あづみ……あ…づみ……あづみ…死んじゃやだ…やだよ……さみしいよぅ……もう会えないのは……やだよぅ……あづみ………」

 東子が静かに頷いた。

「あづみ……!」

「帰ろう、琉真」

「でも…西夜が……」

「…琉真」

 鉄製の扉が開けられる。

「西夜」

 ちょっとおどおどしながら西夜が庭に入ってきた。

「…砂城ちゃんに怒られた。ごめんな…言い過ぎた、琉真」

 西夜は頭を下げる。

「いえ、元はと言えば僕が悪かったんです。すみませんでした」

 東子は琉真と西夜の右手を取って合わせる。安は笑って東子の代わりに言った。

「仲直り」

 二人の顔を交互に見ながら笑った。

「人と関わるのがそんなに難しいことじゃないって言ったのは西夜でしょ?」

「う、うん。でも東子を連れ出す時は僕に一言言ってよね!」

「はい」

 左手で涙を拭いながら、右手で西夜の手を握りしめた。















「な…何この本!」

 遥歌は虫でも潰すように、思わず本を机の上から払い除けた。本を、しかも人から預かった本をこんな扱いはしたことがなかった。それは安から訳を頼まれた『古事記』と書かれた後半が白紙の本。最初はありえないと思っていた違和感が確信へと変わった。そこに書かれていたのは

 一人の孤独な少年が父親を亡くし、神社の兄妹と暮らす物語。















「琉真ー、入っていい?」

 琉真の部屋の襖を叩くと、金髪のくせを手櫛で直しながら顔を出した。

「はい」

「荷物の整理終わった?イギリスに起きっぱなしにしてた私物も届いたんだろ」

 不意に、タンスの上の置物に写真立てが2つ加わっていることに気がついた。一枚は青年…というには少し歳を取った金髪碧眼の男性。どこか琉真の面影がある。父親だろうか。

もう一枚は柔らかい笑みをたたえた安より少し年下のクセっ毛の少女。

「これって…」

「父さんとあづみです。あづみも能力者でした」

「へぇ、あづみさんも能力者…」

 そこでふと疑問がよぎった。

 『ウチらは近い将来、死ななあかんのや』西夜の言葉。その時は考えなかった。いや、考えないようにしていたのか。「死」とはどのような死に方なのか。病死なのか殺されるのか、それとも…。殺されるとしたら誰に…。能力者で死ななければならなかった彼女は明らかに琉真の父親に殺された。

「安さん?」

「い、いや、何でもない。へ、へぇ、あづみさんって可愛い子だった…」

 次の瞬間、安は我と我が目を疑った。

(あの少女だ!)

 髪型が違うから気づかなかったが、琉真と初めて会った時、病院に行く道であった上品に喋る少女。

この目で見た。

生きていた。

生きているんだよ、琉真。

のどの奥で声が詰まる。「あづみ」さんは死んでいるはずで、現に琉真の父親は捕まっていて、なのに何故生きている?

  矛盾

何も知らない琉真はきょとんと安を見る。

「どうしたんです?」

「い、いや…」

 それを知ったら琉真は喜ぶだろうか。大きな食い違いを。

 それとも、まだ何か隠していることが…?

 いや、隠されていることが…?

「琉真、この…あづみさんによく似た姉妹とかいないよね?」

 安は自分なりに言葉を選んだつもりだった。次の瞬間、琉真の小さな白い手が安の両肩をガッと掴んだ。

「会ったんですか?あづみによく似た人に会ったんですか?どんな人でした?」

 かつてない強い表情になる。

「……あ…あぁ……琉真の病院に行く途中……病院の前で別れたけど……白いワンピースに焦赤色のポニーテールで語尾に『ですわ』とかつける上品な……」

「あづみ!」

「琉真!どこへ!」

 答えずに安の横をすり抜けると、琉真は玄関を飛び出した。

「ついて来ないで!安さんを巻き込みたくありません!」

 いつになく素早く石段を駆け下りて行った。















「西夜!琉真が……!」

 急いで西夜の部屋に駆け込んだ。宿題をしていた様子の西夜に取り急ぎのあらましを話す。

「筑波あづみさんが?」

「あ、あの…琉真は何も言わなかったんだけど。ユーレイ……とかじゃないよねぇ?」

「違う!追いかけるよ!」

 西夜は手元のコートに手をかけると走り出した。















「あづみ!あづみ!いるんでしょ!」

「そう声を荒げるものではありませんよ」

 神社から少し歩いたところにある無人の公園で叫ぶ琉真に聞こえたのは少年の声。

「あづみさんは今はまだお会いしたくないそうです。あなたが死にたくならない限り」

「あなたは?」

 眉をひそめ、琉真は尋ねる。現れたのは笑顔の少年だった。透き通る白い肌に横だけ伸ばした茶色の髪と奇妙なほど整った顔だち。

「都音架織と申します」

 ペコリと会釈する。

「と…ね……?」

 架織は全く変わらない笑顔で跪き、琉真と目線を合わせた。

「こう言えばお分かりでしょうか?三番目の言霊遣い、と」















「琉真………!」



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