朝になったら




 苛立つほどに
 晴れた空の日
 ローカル線の
 ボックス席で
 ひとり微睡む日
 
 
 
 向かいの席には
 幼稚園の制服を着たこども、ひとり
 マタニティドレスの母さん、ひとり
 
 
 
 「お母さん、いま通ったの何?」
 「あれは下水場てね
  お水をきれいにして
  海に返してあげるの」
 「きれいになるの、
  どのくらいかかるの?
  朝になったらきれいになるの?」
 
 
 
 そうだね
 朝になったら何もかも
 きれいになってたらいいのにね
 
 
 
 一日が途方もなく
 長かった頃のはなし
 ふいに
 記憶喪失になったような気がして
 目を閉じた
 終着駅を告げる声に
 脳の中心が
 少し痛んだ
 
 
 

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