ある晴日




 きのう、十六の時の君にあったよ
 たまたま自転車で通り過ぎた
 よく晴れた公園で



 買ったばかりの煙草と
 真新しい百円ライターと
 制服のポケットに隠すみたいに
 箱の空け方が分からなくて
 迷ってる
 すべり台の影に
 腰を下ろした少年は
 なれない煙にむせる
 カッコ悪い声までも
 あの頃の君と同じで



 覚えてる?



 私はきのうまで忘れてた



 あきれてため息をつく私から
 目をそらして
 口笛を吹く



 生まれた瞬間みたいに
 何もかも新しくて
 「だいすき」だって思えたのにね



 昔がよかった、なんて
 ありふれたセリフ
 絶対に言いたくはないけど



 ふしぎだね、
 あの頃の方が
 上手に喋れた気がする
 君を喜ばせる言葉
 もう思いつかないんだ



 一緒にいよう
 次の土曜日
 週間予報が当たったら
 傘を持って



 外れたら
 青い空と
 白い雲の
 ふもとにあるすべり台で
 あの日きり
 引き出しにしまっていた
 一本足りない煙草の箱持って
 もうちょっとカっコよく
 煙の輪っか作れるか試してみよう



 お日さまになら
 笑われても構わない
 
 

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