傷跡を抉る睫毛

その姿は
二十年前の面影を残しつつ
歳相応に老けていて
私は思わず目を疑った

貴方がこんな所に
いるはずがないし
私がここにいることも
知るはずがないし

ありえないし

でも筋張った指も
少し赤みがかった髪も
長い睫毛もそのままで
違うのは
胸に下げた名前だけで

そんなはずがないし
そんなわけがないし

貴方ではないかもしれない
貴方は
私には顔色一つ変えず
無愛想に
コンビニのレジを打つ

私に気づかないのは
私が太ったからなのか
私も老けたからなのか

貴方に
何を言われて喜んだのか
何を言われて傷ついたのか
どうやっても
思い出せないのに
その伏せた瞳だけは
忘れるわけがないし

数分前まで
思い出しもしなかった
心の奥の傷跡を
これ以上広げないために
私は慌てて
スマホを取り出す

おかしい

今すぐコンビニを
木っ端微塵にする方法が
検索しても
出てこない

#30DayVerseChallenge
DAY4:忘れたい人を思い出させる歌

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