卯月雪




こんな時にまで神様は
 どこまでも意地悪で
 私は
 どこまでも惨めだった



 三月の始めに舞った雪
 手をつないで見てた
 この冬、最後の雪を
 二人で見られてよかった
 君の言葉が
 嬉しくて
 悲しくて
 日ごと近づく別れが
 あまりにも現実味のないもので



 だのに
 どうしてだろう
 君がいなくなった次の日
 また雪がちらついている
 私たちには
 あの日の雪が
 この冬最後の雪でなくてはならないのに



 カレンダーは桜の写真
 時季はずれの雪のせいで
 あの君の言葉も嘘になってしまった



 花に雪
 冬と春の境界線が見えない
 おかしくなったのは
 地球なのか、
 空なのか、
 それとも私の心なのか



 窓越しに見る雪の花びら
 渡せなかった編みかけの手袋
 ひとすじ
 ひとすじ
 ほどいてみる



 慣れない独りの感触も
 久しぶりの寒さのせいで
 分からなくなっている
 それでも私は



 春を 待つ



 この雪がやめば
 遠いとおい場所にいる
 君の好きな季節を
 一緒に感じられるような気がして
 
 

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