夕方はかなり冷え込むでしょう
モ－ニングコ－ルを告げるテレビ
習慣が命じるまま歯を磨く私
ふいに、歯ブラシの先に慣れない感触
奥歯の奥に異物発見
最初は何かの病気かと
考えること、五分と少々
ようやく一つの考えがよぎる
「そうか、これが世に言うオヤシラズ、か」
そういえば最近奥歯がうずいた
虫歯なら嫌だと放っておいたが
鏡の前でよくよく見てみる
確かに生えてる
白い小さな石山が
思い起こせば多分十年かもうちょっと前
初めてぐらつきはじめた乳歯
確か右上の前歯だったか
歯医者が嫌だと泣き叫び
前歯と親を困らせた記憶
今もあの頃に負けないくらい
歯医者は嫌いなつもりだが、
今ここで泣き叫んでみても
誰も聞いてくれやしないし
生えそろった歯と
生えはじめた心が会話する
どこの誰かも知らないけれど
きっと遠い昔に
オヤシラズを親知らずと名付けた人の
寂しさと孤独に
初めて気づく
名前のとおりに
母も父も知らない
赤ん坊のような白い宝石と
一緒に心をかみしめる
ベランダ越しに空を見る
1Kワンルームマンションにて
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