NOVEL

かむがたりうた

かむがたりうた 最終章「コトバ」

隠処の 泊瀬の河の  上瀬に 斎杙を打ち 下瀬に 真杙を打ち   斎杙には 鏡を懸け 真杙には 真玉を懸け    真玉なす 我が思ふ妹 鏡なす 我が思ふ妻     在りと言はばこそよ 家にも行かめ 国をも偲はめ         「古事記」下...
かむがたりうた

かむがたりうた 後日章「ソシテ」

好きな人がいた。  黒く長い髪とおっとりとした物腰がとても印象に残る少女だった。  両親は音楽の高校を勧めたが、彼女を追って進学高校の普通科に進んだ。  高校に入ってすぐにバンドメンバーの募集を見かけた。  彼女の気が惹けるかもしれない、そ...
私の憂鬱。

私の憂鬱。第一話

頭の中の雑音。それを私は失くす術を知らない。 どうしたら静かな時を過ごせるのか。 どうしたら私は思うがままに生きられるのか。 最近考えるのはそんな事ばかり。 わからない、わからないわ。 だって私はもうとっくに大人になったはずで、 自分ひとり...
私の憂鬱。

私の憂鬱。第二話

茶の間へと案内し座布団に座る様に促せばきょろきょろとしつつ目の前の男は腰を下ろす。 ちゃぶ台に、渋々ながら入れてやった麦茶をドン、と勢いよく置いてやれば進藤新がありがとうと言って口をつけた。一応最低限の礼儀はあるみたいね。 ったく、こんな闖...
私の憂鬱。

私の憂鬱。第三話

早速私に悪戯をしようとした新をたしなめて、頭痛が酷くなる前に終わらせてしまおうと考える。   「私に昨夜のような行為の一切をしないこと。 それさえ守ってくれたらここにいてくれてかまわないわ。以上」 「ちょっとまって。それって…キスとかハグも...
私の憂鬱。

私の憂鬱。第四話

「新、お願いがあるんだけど」 「ん?なぁに?」 「う…」   本題に入る前に、おもわず呻き声をあげてしまった。 いつかやめろ、と言ってやりたいのだが、なんだか指摘できずにいる新の癖なのか(おそらく狙ってやっている)なんなのか、首をこてん、と...
私の憂鬱。

私の憂鬱。第五話

目の前の光景に思わず目を疑ってしまう。 えーと。 勘違いではないのだとすれば、というかこれが現実なら勘違いじゃないわよね? 新と、あっちは佐倉だ。なんでいるんだろう。 茶の間の、ちゃぶだいで。シチュエーションはちょっと雰囲気ないけれど端正な...
私の憂鬱。

私の憂鬱。第六話

あー…眩しい。もう朝みたいね。小鳥のちゅんちゅんて声が聴こえる。 カーテンひいてもけっこう光がもれるから、なんかいつも一回は朝に目が覚めちゃうのよねぇ…。 昼まで寝たい日とかもあるんだけど。7時とか8時とかかな。   ぼんやりとした頭で私は...
私の憂鬱。

私の憂鬱。第七話

伸びをして、いつものように朝を迎える。 それが日常であるはずなのに、なんだか今日はいつもよりも清々しい気分。なぜだろう。   …ああ、そうか。   私はその事実に気が付いて、ふ、と微笑んだ。   「やっぱ部屋に鍵かけて正解だったわね。意識は...
私の憂鬱。

私の憂鬱。第八話

「深咲さん、ここは?」 「んん…すっごい気持ち良い」 「本当?でも、こっちも…すごくかたくなってるよ」 「もう、両方してくれたら良いじゃないの。あ、そこ…」 「ここも?すごいな、深咲さんの身体」 「ああ…」   驚きに目を見開く新に、私は再...