POEM

自由詩

時差

フランスに留学していた  友人は  とんでもない時間に  電話をかけてきたもので  寝ぼけた声で応じる私に  彼女は  時計の目盛を数えてから  あわてて謝ったりして  そんなことが  何度かあって  そのうち  彼女とは疎遠になった  話...
自由詩

六月

六月の雨は  どこかいろづいて  ゆっくりと  かなしいほどに  ゆっくりと  多くの感情を  運びこんでくる  過ぎ行く街並  一昨日届いた  友人の  結婚式の招待状  青いボールペンで  らくがきなど  しながら  いつだったか  マ...
自由詩

別れ香

君がいなくなってから  はじめて  買ったのは  近くのス-パ-で  ワゴンセ-ルに出されていた  紺のバスタオルだった。  君の声を払拭するように  大きく広げ  シャワーでぬれた頭を  きれいに  きれいにふいていく  僕達の別れの香り...
自由詩

白色アイデンテティ

蝉よりも  蚊よりも  短き命よ  こんな小さな  白い命よ  染み入る私の  ココロの脆さを  掘り返さないでくれないか  夜半すぎの来客  コンビニ嬢の友人が  バイト帰りに  差し入れてくれた  袋いっぱいの  期限切れ商品  たった...
自由詩

宿命の花

あなたの花は    なんですか?  誕生花は「野の花」  どうしようもない私  具体名すらあげてもらえない  それを話した時、君は  「ぴったりだ」と  大笑いしたもの  だけど  世界中どこにでも咲く  だけど  変わってると  いつも言...
自由詩

凍夜

あの日の雪は  今も降り続いて  この世界の  すべての音を  たったひとりで  かくしている    こんな日  こんな夜は  さみしい、  さみしい  君をおもう夜  ひとり  うずくまる  風が吹き抜ける  寒くなった右隣  言いそびれ...
自由詩

ある晴日

きのう、十六の時の君にあったよ  たまたま自転車で通り過ぎた  よく晴れた公園で  買ったばかりの煙草と  真新しい百円ライターと  制服のポケットに隠すみたいに  箱の空け方が分からなくて  迷ってる  すべり台の影に  腰を下ろした少年...
自由詩

ナスチョコ戦争

だってそれは 仕方のないこと あえて理由をあげるなら 趣味の不一致 ということで 大の甘党で ナスだけは どうしても食べられない 私 野菜好きで 甘いものなんて 見るのも嫌だと言い張る 君 「おいしい店を知ってる」と ケーキ屋に連れて行く ...
自由詩

微熱

当てにしてなかった 風邪薬が 意外にも結構 効いたらしい 目覚めると 頭痛もだいぶ治まって 熱もひいたようなので あと2錠だけ飲み込んで バイトには行くことにした 寝ぼけた頭をセットするときも 本屋で立ち読みするときも 三分の遅刻を謝るとき...
自由詩

料理芸術家

料理芸術家 君を 僕はそう名づけた テキストも 計量カップも 味見すら必要としない 君を 僕はそう名づけた その日の 気分と機嫌を そのまま皿に盛る 君を 僕はそう名づけた 煮物が食べたいと さっき言ったはずなのに なぜだろう 君は ツナと...