私の憂鬱。

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私の憂鬱。第十一話

「深咲さーん、中道さん三時頃うかがいますって」 「あらそう。じゃあ新、悪いけどお茶の用意お願いね」 「了解ー。あ、なんかもうひとり編集のひとが来るって言ってたよ」 「ああ…そういえば担当が今度からかわるって言ってたからその顔見せね」 「担当...
私の憂鬱。

私の憂鬱。第十二話

しばらく状況が把握出来ずに固まっていたが、私は目の前の立つ男の存在をきちんと認識すれば、とりあえず笑みを作った。   「冴島さん、どうされましたか?ひょっとして今日なにかの打ち合わせでもありましたか?進藤からは特になにも言付かっていないので...
私の憂鬱。

私の憂鬱。第十三話

私は27歳だ。 生まれてきて27年経ったのだ。 年配のお方々からしてみれば、若造もいいところであろう。 しかし、若い女性という枠からはもうはみ出る年齢なのだ。 結婚をしろとうるさい両親。 親戚からたくさんの見合いがあるとひっきりなしに言って...
私の憂鬱。

私の憂鬱。第十四話

最近の私は、なんだか忙しい。 仕事が、とかではなくね。仕事は前から割りと忙しい。 そうではなくて。   こんなことを言うのは、なんというか、色々と恥ずかしいけれど。 心が忙しいと、いうのか、ねえ。   …あー、情けない。          ...
私の憂鬱。

私の憂鬱。第十五話

「このまま屋敷に強制送還でもする気か?」   家の外に停まっていた車へと乗り込んだ新は 後部座席で先程深咲がいかにも真面目なサラリーマン、と心中で呟いた男と横並びに仲良く座っていた。   隣に居る男性は、新が横目でぎろり、と睨む視線も構わず...
私の憂鬱。

私の憂鬱。第十六話

「ねえ、深咲さんなんでー?」 「うるさいわね、朝から」   現在時刻は朝の8時。ご飯を食べ終えて歯を磨いている私の後ろを男がずっとへばりついている状態なのです。 なんで腰に手をまわして抱きついてるんだろうか、こいつは。 うっとおしいことこの...
私の憂鬱。

私の憂鬱。第十七話

『聖女のように清らかでここに存在出来るはずがない。どうしたって、重ねた歳月は覆せないのだから。』   『触れるたび痺れる指先があまりにも不可思議で、いつしか毒を盛られているのではないかと愚かにも考えた。』   『その表情の意味を、知りたいの...
私の憂鬱。

私の憂鬱。第十八話

「ねえ、こんなことしてて本当にうまくいくの?」   携帯電話で呼び出されたホテルの一室にて、お互いにシャワーを浴び終えたふたりはバスローブ姿でソファに腰掛けつつ、向かい合っていた。   奈津美の問いかけに、新は苦笑する。   「さあ?わから...
私の憂鬱。

私の憂鬱。第十九話

結局、それから集中力は途切れたりしたけれど、新に朝食はいらないと言った以上、意地で私は仕事をした。 朝方の4時頃になってあくびをしながら自室へと入る。 本当なら、今日も新は私の布団にもぐりこんできたんだろうけど、さすがに部屋に彼はいなかった...
私の憂鬱。

私の憂鬱。第二十話

「……………」   今まで書いてきたものを見直す。 悪くはない、と思いつつ私は眉間に皺を寄せていた。   「…この家、こんなに広かったかしら」   うわ、寒い台詞。心の中でなんてね、とか付けとかないと、なんだかものすごく居た堪れない。 音に...