自由詩

自由詩

時差

フランスに留学していた  友人は  とんでもない時間に  電話をかけてきたもので  寝ぼけた声で応じる私に  彼女は  時計の目盛を数えてから  あわてて謝ったりして  そんなことが  何度かあって  そのうち  彼女とは疎遠になった  話...
自由詩

我輩はメダカである

我輩はメダカである。  名前はまだない。  つい先日まで  なぜか花屋の店先で  三匹五百円という  靴下のような  値段で売りに出されてた。  気立てのよい飼い主を  夢見ることだけを生きがいに  三匹支えあい生きてきた。  ついに念願の...
自由詩

君を愛そう  花を愛そう  すべての花を愛そう  君のすべてを愛そう  赤い花の気高さを称えよう  黄の花の無邪気さを称えよう  青い花の強かさを称えよう  白い花の清らかさを称えよう  君に花をあげよう  世界中の花をあげよう  君のほし...
自由詩

初夏

この季節に恋をしていた  終わることない恋をしていた  ぼくたちは  いつだって  そうやって生きて来た  それは  空が途方もなく高かった頃のはなし  またひとつ  地球が巡り  駆け足でやって来る季節  日ごと  遅くなる日暮れや  日...
自由詩

ecology

地球にやさしいマークのついた  ティッシュを下げて  買い物から帰る。  信号待ちの交差点を横切る  ディーゼル車に顔をしかめる。  当たり前に過ぎ行く日常は  当たり前に続いていく  中途半端な私は  きっと  歩くだけで  地球のどこか...
自由詩

凍夜

あの日の雪は  今も降り続いて  この世界の  すべての音を  たったひとりで  かくしている  こんな日  こんな夜は  さみしい、  さみしい  君をおもう夜  ひとり  うずくまる  風が吹き抜ける  寒くなった右隣  言いそびれた ...
自由詩

アニバーサリー

ハッピーバースディ  君はそう言ってくれるけど  いつからだろう  私は誕生日に脅迫されている  大人になるのは  自分が大きくなること。  ずっと思ってたんだけどね  気がついたら  じわじわと  年下の人間が増えているだけ  歳を聞いて...
自由詩

バランス

うぬぼれるな。  君がいなくなったからって  わざわざ髪を切るなんて  私はそんなにヒマじゃない  美容院に行ったのもたまたま  雑誌に書いてあったんだ  ”アンバランスな前髪が流行る”  バラバラな毛先をなでてみる  どうかな?  なかな...
自由詩

十九

三つのとき  父は知らない人だった  仕事に追われる忙しい父は  娘と顔をあわす暇もなく  たまの休みにも幼い目には  父は知らない人だった   八つのとき  父は怖い人だった  私がわがままを言うと怒る  いつしか私は父の前では  顔色を...
自由詩

卯月雪

こんな時にまで神様は  どこまでも意地悪で  私は  どこまでも惨めだった  三月の始めに舞った雪  手をつないで見てた  この冬、最後の雪を  二人で見られてよかった  君の言葉が  嬉しくて  悲しくて  日ごと近づく別れが  あまりに...