自由詩

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わたしは冬が

ああ冬が来てしまった嫌な季節だ空気は刺すように痛く地面はぬかるむように重い空は低く草は枯れみんな頭を垂れている寒さは人を孤独にし暗さは心を追い詰める君の意見は聞いていないわたしは冬が嫌なのだ
自由詩

沈む

風呂は危険だ冷えた体温め乾いた喉潤し荒んだ心休め棘な言葉消すそして、ひとたび身を沈めれば命をすぐに消せるのだ
自由詩

深夜徘徊

この街は24時間呼吸を止めない一瞬たりとも呼吸を止めない食べ物を山と積んだ車がコンビニの駐車場に飛び込むこの街は24時間呼吸を止めない一瞬たりとも呼吸を止めない呼吸を止められない街の代わりに夜空は息をするのをやめた息の礫であるはずの白い星粒...
自由詩

正しい

何を以て正しいと言うのか何を以て私を正しいと言うのか何を根拠に私を正しいと言うのかやめてくれお願いだからやめてくれ私を信じないでくれ私を正しいと言わないでくれ私が正しくなくなった時あなたも正しくない人になってしまうから
自由詩

わたしにはIQがない

わたしは中国語が分からないわたしはローマ帝国が分からないわたしは万有引力が分からないわたしは微分積分がわからないわたしは政党演説がわからないわたしにはIQがないだからわたしはきみのこころがわからない
自由詩

隔離病棟

少女は恋をし娘になって娘は愛知り女になって女は子を産み母になるそして母は心を病んで再び幼いこどもに戻り
自由詩

夏が終わる

「あら、息子さんお元気?」「もう試合終わってからはダラケちゃって、 昼過ぎまで寝て、夜中までスマホして どうしようもないわよ」「仕方ないわよ。あれだけ投げきったんだから」「でも受験もあるのよ」「ドラフトとか来ないの?」「来ないわよ。ミョーシ...
自由詩

チョコレート

転けて泣いたらチョコレート勉強に疲れたらチョコレート仕事で叱られたらチョコレート死にたくなったらチョコレートチョコレートチョコレートチョコレートチョコレートチョコレートそうして私はチョコレートが何より嫌いなものになった。
自由詩

令和元日

今年の5月の1日のこと、私は時代ふたつ前の生まれになってしまった。日本中がお祭り騒ぎ。一月もすればきっと忘れる。きっとこれから10年もすれば「戦争の話聞かせて」と無邪気なこどもに聞かれるのだろう。ごめんねおばちゃんはおばちゃんだけど戦争のこ...
自由詩

自由研究

あなたが盆休みにローストビーフを作ってあげると言い出すから菊水でグラム1800円の牛ブロックを買ってきて成城石井で2000円の赤ワインを買ってきて図書館でレシピをコピーしてああわかったこれが36年生の自由研究だ