自由詩

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一日一羽鶴を折る 貴方のために鶴を折る どこにもいない貴方へと 一日一羽鶴を折る 折った鶴は誰にも知られないように毎日捨ててしまいましょう 焼かれた鶴はもう何千羽か積もり積もって灰になり私の喉を詰まらせる それはこの世から消えた貴方からの罰...
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初夏になる

春が来て私は眠りに誘われながら母の日特集のサイトを開く 昨年の初夏に臥せった義母に何を贈ればいいものか 食べ物は制限があるかもしれない 服はサイズがわからない 切り花は手入れが面倒で 鉢植えを贈るほど非常識でない 本は読んでいたものを贈って...
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いちばんの理由

父は酔うと陽気になり饒舌になり途端に人がよくなった 酒よ返せ父を返せ気難しく気が短く人が嫌いな父を返せ こんなの父じゃない 父は無愛想で怒りやすく癇癪持ちなはずなのだ 父を返せ 世界中の酒という酒を私が憎むいちばんの理由 #30DayVer...
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責任の所在

無責任な女です 運転席は嫌いです 車なら助手席がバイクなら後部席全て貴方に委ねます 道に迷ったら貴方のせい 人を撥ねても貴方のせい 私は何もわるくない 無責任な女です 運転席は嫌いです 貴方に全て負ぶさってさぁどこまでも行きましょう 私が死...
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華祭り

きれいなドレスを身に纏い一番高いヒール履きありったけの華集め母にもらった耳飾り 今日は華の祭りの日 昼も夜もなく手を取ってあなたと踊り明かしましょう 疲れたら果実の酒を飲みあなたの膝で眠りましょう 足音鳴らしステップ踏んで四拍子を刻みましょ...
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今日

かなしいことがあったという はらたつことがあったという 誰もが怒る世界の中で私は静かに眠っていよう 私には考え及ばぬところで必死に生きてる人がいる 歴史の本の一文字になる今を過ごしている感覚 いつか誰かに尋ねられたらあの時も悪くなかったと答...
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傷跡を抉る睫毛

その姿は二十年前の面影を残しつつ歳相応に老けていて私は思わず目を疑った 貴方がこんな所にいるはずがないし私がここにいることも知るはずがないし ありえないし でも筋張った指も少し赤みがかった髪も長い睫毛もそのままで違うのは胸に下げた名前だけで...
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夏の猫の噺

夏の盛りに猫を拾った 痩せ細って泥を浴びしかし顔立ちのいい三毛猫で文月なので「ふみ」と名付けた 暑い夏を共に過ごし瞬きする間に大きくなり 秋には月を眺め酒を酌み交わし 初めての雪に戸惑いコタツで暖まり 春は何かを恋うて一人と一匹で夜中泣いた...
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かぞえうた

一番きれいな靴を履き 二兎を追った後悔で 三界には家なしと 四階に駆け上がる 五本の指を空に向け 六限の鐘が鳴る 七粒の星数え 八方塞がりの意味を知る こころえているのです とんと跳び降りる     百万回生まれ変わり またあなたに会いに行...
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ご案内

本日も日和見電鉄をご利用いただき誠にありがとうございます ただいま三百十五番線を通過します電車は明後日方面行き特急こころでございます 暴走しがちで脱線しがちな電車ですので皆様必ずくれぐれも白線の内側にお下がりください 白線の内側にいる者まで...